次期大統領に選出されたトランプ氏が掲げた主要政策をめぐるトランプトレードが金融市場を席捲しています。
選挙運動中、トランプ氏は下記のような政策を掲げていました。
- 法人税の減税やインフラ投資計画を含む積極的な財政政策
- FRBの金融政策へはややタカ派となる可能性
- 通商政策はグローバル化からプロテクションニズムへの転換
- 移民への規制強化
それらの経済への影響はどのようなものが考えられるでしょうか?
これらの政策すべてから、「インフレ率の上昇をもたらし、高金利の世界となる」と予想され、現在、その期待が急速に市場に織り込こまれています。
積極的な財政政策は当然、財政収支の悪化を招きます。
そして、貿易に関税を課すとなれば国内の物価は上昇するでしょう。
加えて、移民を制限するとなると労働市場で働き手が不足することで賃金の上昇が起こります。
結果として、中央銀行であるFRBは政策金利の引き上げペースを速める必要に駆られる可能性が高まる、というシナリオになります。
トランプ氏が勝利してから、米国債の金利は急速かつ大幅に上昇しました。利上げ開始とはまだ距離のある欧州・日本を含めた先進各国との金利差が拡大するとの思惑から、対円や対ユーロ等の主要国通貨に対してドル高が進行しています。
また、世界的な低金利環境の継続が見込まれていたため、魅力的とされていた新興国通貨にも大きな影響が出ており、移民政策の影響を強く受ける可能性が高いメキシコペソや、関税の引上げの影響を受ける可能性のある中国人民元を含むアジア圏通貨に対しても米ドル高傾向が強く出ています。
先週、メキシコは通貨防衛のために0.50%の利上げを実施し、政策金利を5.25%へ引き上げました。インドネシア、マレーシアの中央銀行でも、通貨防衛のため自国通貨買の介入を実施したと報道されています。
米ドル円は選挙前の100円台前半から一気に110円を突破、ユーロドルも選挙中の1.13近辺から足元1.06を割り込む展開へ。この米ドル高はどこまで続くのでしょうか?
トランプ政策への期待感のみで突き進むにはやや限界があるという見方が妥当だと言われていますし、すべての政策がそのまま実現するとは当然思わていません。
金融市場では、今後、トランプ政策を巡る不透明感が高止まりし続ける可能性があると考えられています。
12月15日のFOMCで利上げがほぼ確実視されており、11月末に決算を迎える多くのヘッジファンドが、このトレンドを追っている可能性があります。
したがって、米ドル高のトレンドにはまだ逆らわないほうが賢明だと思われます。
今週は米国の感謝祭(サンクスギビング)休暇の週であり、一段値動きが高まりやすい傾向にあります。そのため、思わぬ水準を見る可能性があり、「ドル円115円いくかも!?」なんて声もちらほら聞こえています。
とはいえ、ポジションサイズに十分に気を付けて取引をしていきましょう。