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今週の相場観:2016年12月第2週

米大統領選におけるトランプ氏の勝利後の米ドル高が一旦小休止となり、連日高値を更新していた米株も一旦上げの勢いが収まってきました。週末にイタリアの国民投票を控えていたことも、リスク資産を買い進める勢いを削いだ可能性があります。

 

 

雇用統計は可もなく不可もなく

また金曜日に発表された雇用統計では、そこそこの内容ではあったものの、平均賃金の伸び率が低い結果となっており、金融市場では12月のFOMCにおける利上げは確実視しながらも、来年の利上げに関しては年3回ペースの織り込みから、2回ペースへと若干見方を修正したことが米ドル高にストップをかけた形です。今後の経済政策、経済指標次第で、利上げ回数2-3回を往復するような展開が予想されます。

トランプ氏就任後のアメリカは保護主義か

さて注目のトランプ氏の動向ですが、ここ数日は国内企業の生産拠点移転を阻止する動きを強めています。自動車会社フォード社のメキシコへの工場移転計画の阻止、米製造業大手のユナイテッドテクノロジーズ社の傘下にある、空調大手のキャリア社のメキシコ工場移転計画の取り消し、など早くも複数企業が起業戦略の転換を決定しました。キャリア社の親会社であるユナイテッドテクノロジーズ社は米政府から防衛関連の受注を多く受ける企業であり、「ホワイトハウスとの関係を悪化させたくない」、という政治的判断が下されたものと思います。これにより、キャリア社は一転インディアナポリスに工場と1100人の雇用を維持することとなりました。

いよいよ「自由主義!」ではないアメリカの到来かもしれませんね。。。

トランプ氏は携帯のアップルにも圧力をかけていると報道されており、結果アメリカにおける雇用は守られるかもしれませんが、海外の低賃金労働力が使用できないことにより、iPhoneが高くなる、自動車が高くなるといった事態が訪れる日が来るかもしれません。 

また次期財務長官に指名された元ゴールドマン・サックスのムニューチン氏は30年を超える国債の発行を模索する意向を示し、100年債の発行も可能性ありと示唆。 高インフレ、財政規律の緩み、トランプ氏の政策の行きつく長期的な方向は米ドル安政策と思われます。

OPECは減産合意へ

一方、減産に踏み切れるか注目されていたOPECですが、サウジアラビアの説得により、イランが土壇場で歩み寄り8年ぶりに減産で合意。原油価格は50ドル台へ回復しました。今回の合意内容は、「10月時点の日別生産量3364万バレルを、2017年1月以降から6か月間に渡り日量3250万バレルへ生産を絞る」、というものです。実際に拘束力を発揮するか1月からが見ものです。

しかし、オイル価格が大幅に下落することは回避される見込みであることから、世界のインフレ率は上昇傾向となりやすく、その観点からは米国の利上げ回数もそこそこのものとなると考えらえられます。景気の基調が弱い、欧州、日本と比較すると、やはり来年前半ぐらいまでは米ドル高圧力がかかりやすい展開と言えるのではないでしょうか。

年末に向けては一旦米ドル高が調整するものの、来年への仕込みという点ではやや米ドルに買いが集まりやすい展開が継続するものと思われます。それにしても、自由国アメリカが消滅する日が近いのかどうなのか、トランプ劇場から目が離せません。